社会地質学会誌
第13巻 第1/2号 2017年

論 説

国際共同研究のためのGIS データ共有システム
中村晋作・武田知己・広瀬和世
一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構が開発したGIS データ共有システム(以下「GDSS」という)は,ネットワークを介してデータを共有するためのweb-GIS である.GDSS は,容易な構成、容易な操作性及び容易な運用性を考慮して開発された.GDSS は,専門の運用者を必要とせず,1 台のデスクトップPC 上で稼働する.GDSS は,オープンソースで開発されているが,その操作性は簡便なものとなっている.GDSS は,ペルー国における森林監視及びセルビア国における持続可能な資源開発システムという2 つの研究での導入が試みられている.GDSS は,世界中のあらゆる分野で利用できる可能性を示している.
Artisanal/Small-scale Gold Mining, ASGM, GIS Data, Web-GIS, Open Source, International Research Projects

国際共同研究のためのGIS データ共有システム

短 報

茨城県高取地域より産したニオブ・タンタル含有鉄マンガン重石
村尾 智・五十公野裕也・児玉敬義・中島和夫
茨城県高取地域のボーリングコアから,ニオブ,タンタルを含む鉄マンガン重石を見出した.結晶は,笠間層に貫入する花崗岩近傍に発達した熱水性石英脈中に産し,自形を呈する.EPMA で分析したところ,ニオブとタンタルを最大で4.8wt%と0.66wt%,それぞれ含んでいた.これらは他の元素と組み合わさって,Fe+Nb+Ta+Sc⇔W+Mn の複合置換をしていると推定される.
Niobium, Tantalum, Wolframite, Takatori, Japan

茨城県高取地域より産したニオブ・タンタル含有鉄マンガン重石

寄 書

2016 年台風10 号に伴う豪雨による岩手県岩泉町小本川流域の被害
仲川隆夫
2016 年8 月30 日,台風10 号に伴う豪雨によって,岩手県岩泉町では小本川などが氾濫し,死者19 人,住家の全半壊や床上浸水,水田の冠水などの大きな被害が発生した.小本川流域で被害状況を調査すると,被害の分布と土地条件との間に密接な関わりがあり,高水敷や低水路であった地点では,浸水に伴う被害が大きくなり,河川跡が再び河川に戻ったともいえるような様相を呈し,国道455 号の小本川に沿った地点では,路肩のコンクリートの護岸とともに新しい盛土部分が浸食され,新しい盛土(人工地層)は災害に脆弱なことを示していた.災害予測の際には,土地条件のみならず,人工地層の分布にも配慮する必要がある.
damage, heavy rain, Typhoon No.10 of 2016, Omoto River, Iwaizumi Town, Iwate Prefecture, Northeast Japan

2016 年台風10 号に伴う豪雨による岩手県岩泉町小本川流域の被害