社会地質学会誌
第17巻 第3/4号 2021年

論 説

海底熱水系鉱石に見られる生物鉱化作用と有害金属 −沖縄トラフにおける事例研究
初川 悠・村山日向子・佐藤千穂・村尾 智・中島和夫・湯口貴史
 沖縄トラフ伊是名海穴JADE サイトの熱水沈殿物を顕微鏡,EPMA で観察,分析した結果,有毒金属を含む生物鉱化作用の証拠と推定される多様な組織が観察された.代表的なものとしては,フランボイド状黄鉄鉱,同心円状〜球状黄鉄鉱,中心にAs に富む同心円状黄鉄鉱,P を含む粒子などである.フランボイド状黄鉄鉱は主にバクテリアマット内で微生物の代謝により生じた硫化水素と熱水中のFe2+イオンが結びついて生じたと考えられた.中心にAs に富む同心円状黄鉄鉱はAs を含む微生物が熱水に取り込まれて黄鉄鉱が成長したと解釈される.これらの組織は,硫化物によって囲まれたり切られたりしていることから高温熱水による硫化物の鉱化作用より前で,比較的低温の生成であると考えられる.主にバクテリアマット内では,マット中で生じたフランボイド状黄鉄鉱などが,その後の高温熱水によって硫化物に取り込まれて種結晶となり,主要な鉱化作用の引き金になった可能性が高い.
ore texture, submarine hydrothermal deposit, toxic metal, biomineralization, framboidal pyrite

海底熱水系鉱石に見られる生物鉱化作用と有害金属 −沖縄トラフにおける事例研究

調査・技術報告

いちき串木野市における新しい技術の導入による観光振興についての一考察
西嶋啓一郎
 鹿児島県いちき串木野市には長い歴史文化に支えられた豊富な観光資源がある.特に坑道の一部を利用した薩摩金山蔵の観光はユニークである.市では「食」を主題にした観光・交流活動の促進を図っているが,交通アクセス,人口減少高齢化など,観光を基盤にした持続可能なまちづくりには課題も多い.そこで本研究では,COVID-19(コビッド・ナインティーン)以後のいちき串木野市におけるインバウンド観光の発展を目指すために,観光・交流活動の促進では,デジタルマーケティングを活用した越境EC,交通アクセスの問題では,自動運転システムを利用するMaaS の構築による観光振興を考察した.
Ichikikushikino City, gold mine, digital marketing, autonomous driving system

いちき串木野市における新しい技術の導入による観光振興についての一考察